ハラスメントの対象になるのは悲惨な事態です。だれでも被害者になる可能性があります。特定の誰か、自分以外の人が…と考えられれば、他人事で済ませるのかもしれませんが、そうはいきません。

ハラスメントのターゲットは誰でも良いのです。それはターゲットが個人の趣味によって決まるのではなく、グループの構造によって決定されるからです。言い替えるならば、ハラスメントは構造を背景に持っています。

一般的にいって、構造にはまってしまうと、対抗するのは難しくなります。構造が持っている力が強すぎるからです。誰かが個人的になんとかできるレベルではありません。

なのでハラスメントの被害を受ける前に対策するのが肝要というわけですが、それでも気がついたらハラスメントの対象になっていたということもあるでしょう。

そのような緊急事態では対抗するのではなく、逃げるのが基本です。自分の力より大きな力に対峙したとき、最初に考えるのは逃げる方法です。これはハラスメントに限らず、あらゆる武術・戦術に共通した原則です。

ハラスメントを受ける現場で、自分の気持ちをやんわりと、でも明確に相手へ伝えるようにします。相手を直接攻撃する言葉は厳禁です。相手の感情を刺激するからです。人格攻撃も避けるべきです。ただ静かに言葉を使って相手の理性に話しかけます。

通常なら理性が優位になった時点で、客観的に冷静な判断力を取り戻してもらえるはずです。それで行為を中止してくれるなら、作戦成功でしょう。

それでも続くようなら、逃げる決意をして準備します。具体的に逃げる方法を考えておかなければいけませんよね。学校なら転校、職場なら転職、家庭なら相談所といった具合に、それぞれに対策します。

ひとりで悩む、ひきこもるという意思決定と行動は問題を複雑にしますので、絶対に避けたい。時々、突然の出社拒否に打って出る人がいたり、消息を絶ってしまう人を見たことがありますが、そのようなことをすると一方的に悪者にされてしまうのが落ちです。

ちなみにハラスメントの構造とは特定の環境です。職場なのか学校なのか、それとも家庭なのかの違いです。通常では学校でのハラスメントが家庭でも同様に行われるような事態はありません。

ただ複数の環境で同時にハラスメントを受けることもありえます。職場でハラスメントを受けている人が、家庭でもハラスメントを経験する事態はあるでしょうが、ハラスメントのケースとしては別件ですし、まれな事態です。

ただ職場と家庭の両方でハラスメントのターゲットだと逃げ場がないという状況です。最近そのような事例を相談されて、絶望的になりました。そのような事態に遭遇しても、希望を捨てずに援助者を探す努力があれば、事態が好転するでしょう。

相手は何人なのかというのも、構造を決定する要素です。ハラスメントが一対一で行われる例は多くありません。ですから一対多の対決を避けて一対一に持ち込むとよく、その場合相手の群れの一番弱いところが突破口になります。

第一歩として動物的衝動に対抗する理性へ呼びかけるわけで、それでもダメなら動物的衝動に動物的対抗措置を用意するという順番です。その両方を考慮して、日頃の準備がものをいいます。

日頃から周囲の人が受けているストレスに注意を払い、自分がストレッサ(ストレスを与える人)にならないように心がけます。人の時間と空間に割り込まない、主権を害さない、無視しない、というのは基本です。

礼儀作法を乱さないように注意するのが意外と大切です。相手との距離を保つ礼儀作法はいざという時にも役立ちます。礼儀正しい交渉は、役割や地位を認識させて理性を刺激します。