すべてのハラスメントは強者による力の行使です。自分より力があると思える相手にハラスメントをする人はいません。つまり何か特定の部分では、相手の力が圧倒しているのです。そしてそのようなある種の力を行使して、支配しようというのだから、戦闘と同じです。

戦闘に勝つ、あるいは負けないのを目指すのであれば、戦略と戦術を知らないでは済まされないかも知れません。強いから勝てるとは限りませんし、被害が大きければ勝っても利益はありません。

逆に弱いから負けるとは限りません。歴史に見るさまざまな国家間の戦争はそのように証言しています。つまり負けても利益が多ければ勝ったのと同じになります。勝ち負けを超えた戦略を持つのが大切です。

そこで基本として対ハラスメントに応用できると思われるランチェスター戦略を紹介しようと思うのです。これは第一次世界大戦のときイギリスのランチェスター(1868〜1946)が提唱した「戦闘の法則」に原点があります。その後、アメリカで研究され発展した戦闘のための方法論です。

強さ、力といった戦闘力は武器と兵力数で決まり、武器は敵と味方の武器の性能や腕前で、喧嘩が強いとか、声が大きい、体が大きいとかが武器性能になるでしょう。兵力数は兵士や戦車や戦闘機数などの物量で、兵力数相手の力の原理は周囲の環境にあるものでしょう。

例えば学校であれば、同級生のグループでしょう。ハラスメントがたった一人で行われる例はあまりありません。会社でも一人の上司が周囲から分離した状態でハラスメントするのは無理です。周囲に必ず、同調者がいてサポートしているはずです。

一対一、局地戦、敵と近づいて戦う、といった原始的な戦では戦闘力=武器性能 × 兵力数で勝敗が決まります。相手がたった一人なら、兵力数は関係がなくなり、武器性能が結果を決めます。

それに対して近代的な集団同士の戦闘になると戦闘力=武器性能 × 兵力数の2乗だとされます。集団同士の近代戦では兵力が多いほうが圧倒的に有利です。多勢に無勢はどのような武術でも避けるように教えられます。

弱者のための戦略は古典的な戦いを戦うことにあります。集団戦いをたった一人ではじめては勝ち目はありません。一対一、奇襲を前提すれば、兵力で圧倒されないように武器性能を高めておくのです。

相手より上手にする方法を探すこと、相手より運動能力を高めること、議論の技術を磨くなどします。独自に販路を開拓する、自分にしかできない技能を身につける。得意科目を持つなどが考えられますね。

武器効率が悪いなら、兵力を高める工夫と努力が必要です。周囲の人たちを一人一人味方に付けていく、独立した友人グループを持つといった方法が思いつきます。現場にいない人たちの味方を増やしてもあまり効果は出ないので注意が必要でしょう。

このような準備を進めていくことで、実際のハラスメントを避けることができるかも知れません。相手はそのような争い方を避けたいでしょうから、結果的に戦闘を避けられる可能性が高くなるわけです。

例えば局地戦を応用しますと、一度に全員を相手にしない方法で個別、一人ずつ説得するというやり方でしょう。将を射んとせば、まず馬を射よというのも同じ心をいっていると思います。

接近戦を考えるならば、相手と親密になることが中心になるように思います。あるいは一騎討ちを目指します。一騎打ちは相手の力を制限しているところに眼目があります。自分の得意な分野に制限するなどして、全力で戦えないようにします。

一騎打ちの状況ならさまざまな工夫が可能ですが、陽動戦も一法です。虚を突くというゲリラ的な方法を考えましょう。